傷病手当金と労災何が違う?
適応障害の場合どちらを申請する?
傷病手当金と労災の申請方法は?
そんなお悩みを解決するための記事をご用意しました。
本記事の内容
傷病手当金を受給していた筆者が労災と併せて解説していきます。
傷病手当金とは
最初に傷病手当金について解説していきます。
傷病手当金についてはこちらの記事でも詳しく説明しているので目を通してみてください。
傷病手当金とは…
病気や怪我などの療養により、会社からの給与を得られない間の生活の保障するために健康保険から支給される給付金のこと。
傷病手当金の一番の特徴は健康保険から支給されるということです。
傷病手当金を受け取る条件とかはあるのにゃ?
条件がいくつかあるから次で詳しく説明するね!
傷病手当金の対象者
傷病手当金の対象となるのは以下の3つの条件が揃っている時です。
- 健康保険に加入する被保険者
- 病気や怪我で働くことができない
- 病気や怪我の休養で事業主から十分な報酬を受け取ることができない
雇用形態や健康保険に加入している期間は問われません。
でもこの3つの条件は全部揃ってないといけないのにゃ?
そうだね!あと国民健康保険の被保険者も対象外なので要注意です!
全国土木建築健康保険組合など一部の国民健康保険では支給されることもあります。
傷病手当金の支給条件
傷病手当金の支給の条件は以下の4つです。
- 業務外での怪我や病気の療養のための休業
- 仕事に就くことができない
- 連続する3日間(待機期間)を含む4日以上仕事に就くことができない
- 休業した期間について給与の支払いがない
待機期間ってなんなのにゃ?
待機期間とは以下の通りです!
待機期間とは…
- 初回の請求時に連続して3日間仕事を休んだ期間
- 待機期間は有給利用も可能
- 会社の休日(土日など)が含まれていても待機期間に含まれる
- 3日間の待機期間の後の4日目からが傷病手当金の対象
業務上の病気や怪我に関しては労災保険の対象になります。
労災保険ってなんなのにゃ?
労災保険についてはこの後説明していくね!
傷病手当金の支給される期間
続いて傷病手当金が支給される期間について説明します。
結論として支給される期間は【待機期間後の支給日から最長で1年6ヶ月】です。
支給される期間が決まってるのはちょっと残念なのにゃ。
そうだね。でも少し前にこの支給される期間の計算が改善されたんだよ!
支給期間についての変更点
- 令和4年1月1日から支給開始日から通算して1年6ヶ月に変更された
- それ以前は支給開始日から1年6ヶ月だった
- その期間内に復帰して、傷病手当金を受け取っていない期間も1年6ヶ月の中に含んでいた
- 変更後はこの傷病手当金を受け取っていない期間は1年6ヶ月に含まないことになった
傷病手当金をもらっていない期間が含まれなくなったのは嬉しいのにゃ!
筆者は変更前に利用してたから、完全退職する頃は支給期間外だったよ…。
もう一回傷病手当金って申請できないのにゃ?
支給期間が過ぎてしまうと同じ症状で再申請はできないの。
ある程度出勤している期間がある場合は再申請が認められるケースもあります。
傷病手当金で支給される金額
次に傷病手当金で支給される金額についての説明をしていきます。
傷病手当金の支給金額
- 給与の3分の2くらいの金額
- 受給を開始する以前の連続した12ヶ月間の標準報酬月額を平均した額÷30日×3分の2
計算式にある連続した12ヶ月ってそんなに働いてない場合はどうなるのにゃ?
その場合以下のどちらか低い方の金額で計算するよ!
- 受給開始日の月以前の各月の報酬月額の平均額
- 前年度9月30日時点で健康保険に加入している人全員の標準報酬月額の平均額
例えば、2019年度に支給開始の場合は、2018年度の標準報酬月額の平均30万円で計算されることになります。
なんとなく傷病手当金についてはわかったのにゃ!
傷病手当金についてはこちらの記事で詳しく解説しています!
労災(労災保険)とは
次に労災(労災保険)についてお話していきます。
労災(労災保険)とは…
- 労働者が仕事や通勤が原因で、負傷したり病気になったりすることを労災(労働災害)と言う
- 労災(労働災害)が発生した場合に労働者は労災保険から補償を受けられる
- 健康保険と違い治療費の自己負担はない
業務中の怪我や病気が対象なのが労災なんだにゃ!
傷病手当金と違って治療費の負担がないこともポイントだね!
でも労災ってあんまりいいイメージじゃないから会社に隠されないのにゃ?
労災と会社の関わりについては下にまとめてみたよ!
労災と会社の関わりについて
- 会社は従業員が労災申請する際の「手助け」と「証明」をすることが法律で義務付けられている
- 労災事故が発生したことを労働基準監督署長に報告しないと労災隠しとして処罰される可能性がある
- 会社側の落ち度(過失)がなくても責任をとる必要がある
労災の認定は労働者の申請によって労働基準監督署長が判断するものです!
じゃあ会社が判断するわけではないのにゃ!
長時間労働やパワハラによる精神疾患なども労災の一種になるよ。
労災の対象者
労災の対象者となるのは雇用形態に関わらず全ての労働者です。
本来労災の対象外の個人事業主や会社の代表などは特別加入者として加入することもできます。
ただし健康保険との併用はできません。
もし会社が労災保険に入ってなかったらどうするのにゃ?
その場合も労働者に非はないので、労災認定が降りたら給付がもらえるよ!
労災の種類
労災には大きく分けて以下の2つの種類があります。
- 通勤災害
- 業務災害
通勤災害
通勤が原因による労働災害は通勤災害に分類されます。
具体的には通勤が原因で障害を負ったり亡くなったりした場合に適用されます。
これ通勤の途中で寄り道して事故に遭ったとかでもいいのにゃ?
それはもちろんダメだよ!あくまでも仕事と関係があることが条件だよ。
業務災害
仕事が原因の労働災害を業務災害と言います。
業務災害と認定されるためには業務との間に相当因果関係があることが必要です。
因果関係は以下の2つの要素で判断されます。
- 業務遂行性:業務中に発生した怪我や病気なのかを判断する
- 業務起因性:業務が怪我や病気の原因になったのかを判断する
特に精神疾患の場合は因果関係の証明が難しいって言われることが多いです。
辛い時に色々しないといけないのは大変なのにゃあ。
労災の認定基準についてはこの後説明するね!
労災の認定基準
次に労災の認定基準について説明します。
労災の認定基準は怪我や死亡の場合と精神疾患の場合で多少異なります。
怪我や死亡の場合
怪我や死亡の場合は以下の2つの点が満たされれば原則労災認定されます。
- 負傷や死亡が業務中に発生したもの
- 業務が原因となって発生したもの
これなら分かりやすくていいのにゃ!
うつ病や精神疾患の場合
うつ病や精神疾患の場合は以下の3つの要件を満たすと労災認定されます。
- 発症前おおむね6ヶ月以内に業務による強いストレスを受けたこと
- うつ病やストレス反応など労災認定の対象となる精神疾患と診断されたこと
- 業務外のストレスや個体側要因により発症したとは言えないこと
1つ目の強いストレスってどんなものが対象なのにゃ?
強いストレスについては下にまとめてみたよ!
強いストレスとは…
- 「特別な出来事」もしくは弱・中・強の3段階で評価
- 特別な出来事は心理的負荷が過度のものと極度の長時間労働の2種類
- 特別な出来事がない場合は発症前6ヶ月以内の具体的な出来事を総合的に評価する
どんな出来事が「強」判定になるのにゃ?
事故や災害の体験、パワハラなどが「強」判定になるよ!
あと3つ目にあった個体側要因ってどんなのにゃ?
それに関しては以下の通りです!
労災認定されない個体側要因
- 離婚や重い病気など業務とは無関係なストレスで精神疾患を発症したと判断させる
- 過去に精神疾患で通院歴がある
- アルコール依存などの問題がある
過去の通院履歴もダメってなんだか厳しいのにゃ。
精神疾患の場合の労災認定率って3割くらいだから結構厳しいんだよね…。
もっと優しい世の中になってほしいのにゃあ。
労災で受けられる給付
労災保険で受けられる給付金は全部で8種類ほどです。
ここではその中でも代表的な以下の3つの給付金について説明します。
- 休業補償給付
- 療養保障給付
- 障害補償給付
なんか似たような名前でわかりにくいのにゃ…。
それぞれについて次で詳しく説明していくね!
休業補償給付
1つ目の休業補償給付について説明していきます。
休業補償給付とは…
- 怪我や病気の療養のために労働ができず賃金を受け取れない日が4日以上続く場合に受け取れる給付金
- 業務災害の場合は会社に平均賃金の6割の補償が義務付けられている
- 給付金額は休業特別支給金と合わせて給付基礎金額の8割を受け取れる
- 一定の期間で打ち切られることはない
給付基礎金額っていくらくらいなのにゃ?
医師の診断を受けた日より以前の3ヶ月間の賃金を日割した金額で計算されるよ!
休業補償給付の注意点も知りたいのにゃ!
休業補償給付の注意点は以下の通りです!
休業補償給付の注意点
- 傷病手当金と同じく最初の3日間は待機期間で4日目からの給付
- 医療効果が期待できなくなった場合は打ち切られる可能性がある
打ち切られたらどうするにゃ?
打ち切られた場合も残った症状によっては保障が受けられるよ!
- 残った症状が障害者等級に該当する場合、等級により障害給付もしくは障害一時金を受け取れる
- 精神疾患の場合はその症状に応じて12級または14級の認定がされることがある
療養補償給付
2つ目の療養保障給付について説明していきます。
療養保障給付とは…
- 労災病院や労災保険指定の医療機関・薬局で無料で治療や薬の支給が受けられる
- 近くに労災病院や労災保険指定の医療機関がない場合は治療の費用の支給を受けられる
- その場合は一度立て替えてから労働基準監督署へ書類提出して現金を支給してもらう
療養保障給付はいつまでもらえるのにゃ?
症状が完治するまで。もしくはこれ以上治療を続けても症状の改善が見込めない状態になるまでにかかった費用を受け取れるよ!
障害補償給付
3つ目の障害補償給付について説明します。
障害補償給付とは…
症状が完治しないで後遺症が残ってしまった時に支給される
障害等級が1級から7級の場合は障害保障年金が給付される
障害等級が8級から14級の場合は障害補償一時金が給付される
この等級ってどうやって決めるのにゃ?
労働基準監督署に申請を出して後遺障害等級が認められると決まるよ!
労災申請の3つのポイント
労災申請の以下の3つのポイントについて説明していきます。
- 労災は後からでも申請可能
- 再審査の請求ができる
- 労災保険に未加入の会社でも労災保険は適用される
なんだか気になることがいっぱいなのにゃ!
次で詳しく説明していくね!
労災は後からでも申請可能
結論として、労災は申請の期限以内であれば退職後でも申請が可能です。
ただし、給付の種類によって申請の期限が違うので注意しましょう。
代表的な給付の申請期限
- 療養補償給付:費用を支出した日の翌日から2年
- 休業補償給付:賃金が支払われない日の翌日から2年
- 障害補償給付:症状が治癒した日の翌日から5年
確かにこれは要注意なのにゃ!
再審査の請求ができる
労災認定が降りなかった場合は再審査の請求ができます。
再審査の請求は、決定書の謄本が送付された日の翌日から2ヶ月以内に行うことが必要です。
再審査の請求ができるなら心強いのにゃ!
再審査の請求は期限が決まってるからそこは要注意だね!
労災保険に未加入の会社でも労災保険は適用される
労災保険に未加入の会社でも所定の手続きを行えば労災保険は適用されます。
労災保険は従業員を雇用する全事業主に対して加入が義務付けられているものです。
病院受診時に労災であることを伝え、労働基準監督署で手続きを行うことで申請ができます。
加入してなかった会社はどうなるのにゃ?
もちろん会社はペナルティを課されるよ。でも労働者に非はないから安心してね!
傷病手当金と労災は同時申請できる
傷病手当金と労災の同時申請について説明していきます。
傷病手当金と労災って同時に申請できたのにゃ!?
傷病手当金と労災は実務上は同時申請が可能だよ!
傷病手当金と労災について
- 傷病手当金は要件が満たされれば支給される
- それに対して労災は因果関係等の調査に時間がかかる
- 労災認定が降りるまでの休業補償として傷病手当金を申請する
- 労災認定が降りた場合は受給した傷病手当金を全額返金する必要がある
- 労災認定が降りなかった場合はそのまま傷病手当金を受給することができる
労災認定が降りた場合は少し手間だけど、休職中の金銭的な負担を減らすことができます。
でも労災の認定率ってどのくらいなのにゃ?
労災の認定率は年々減少傾向にあって、精神疾患の場合だと3割くらいなんだ…。
3割だけなのにゃ!?そしたら傷病手当金も一緒に申請した方が安心なのにゃ!
傷病手当金と労災の申請方法
傷病手当金と労災の申請方法について説明していきます。
傷病手当金の申請書は加入している健康保険組合のホームページからダウンロードできます。
労災の申請書は厚生労働省のホームページからダウンロード、もしくは労働基準監督署でもらうことができます。
申請書の記入のポイントについては次から説明していきます!
【4ステップ】傷病手当金の申請方法
傷病手当金の申請方法は以下の4ステップです。
- ご自身で「被保険者記入用」2枚に記入する
- 医師に「療養担当者記入用」の記入をお願いする
- 会社に「事業主記入用」の記入をお願いする
- 傷病手当金の申請書を提出する
傷病手当金の申請方法の詳細についてはこちらの記事をご覧ください。
【3ステップ】労災の申請方法
労災の申請方法は以下の3ステップです。
- 病院で診察を受ける
- 労災保険給付の請求書に記入する
- 労働基準監督署長に提出する
思ったよりも簡単そうなのにゃ!
書き方のポイント等を次で詳しく説明していくね!
病院で診察を受ける
まずは労災保険指定医療機関または最寄りの取り扱い病院で診察を受けます。
労災保険指定医療機関ってどこにあるのにゃ?
労災保険指定医療機関は厚生労働省のホームページから検索できるよ!
受診の際には労働災害であることを伝える必要があります。
労災保険給付の請求書に記入する
労災保険給付の請求書の作成は原則本人が行うが、書類作成を会社が代行することも可能です。
実際には多くの会社が労災申請書類を作成して、提出手続きを行なっています。
自分で手続きするときは会社が記入するところはないのかにゃ?
事業主からの労働災害であることを証明するための署名欄があるよ!
勤務先が署名してくれない場合は管轄の労働基準監督署に相談するか、会社が署名を提出しない旨を記載した「署名拒否理由書」を準備して労働基準監督署に提出すれば大丈夫です。
補償の種類に応じた請求書が必要なので以下でポイントを説明していきます!
療養保障給付請求書について
- 様式第5号とも言われる
- 労働保険番号は会社や事業ごとの14桁の番号
- 個人ではわからないので会社に記入してもらうか、会社に確認して記入する
- 負傷または発病年月日で発病年月日が不明な場合は初めて病院を受診した日を記入
- 正式な発病年月日は後日労働基準監督署の調査で決定する
- 負傷または発病の時刻で発病時刻が不明な場合は記入の必要はない
- 災害発生の事実を確認した者の職名、氏名は労働災害が発生した時にその様子を見ていた人、いない場合は上司や労働災害の報告を受けた人などの職名と氏名を記入する
- 災害の原因及び発生状況は労働災害の発生状況をできるだけ詳細に書く。
- 理想はその光景が目に浮かぶように書くこと
状況が分かりづらい場合は後日労働基準監督署から確認が入ることがあります。
休業補償給付請求書について
- 様式第8号とも言われる
- 請求書本体と別紙1、別紙2、別紙3がある
- 休業給付は複数回に分けて請求することも可能(その都度様式8号を提出する)
- 賃金を受けなかった日の日数は公休日と待機期間を含めた日数を記入(有給休暇取得日は除外)
- 診療担当者の証明は請求書を作成したら通院先の主治医に記入の依頼をする
- 平均賃金は別紙1で算出した平均賃金を記入
- 別紙1は休業補償給付の支給額の計算に必要な平均賃金を確認するために必要
- 別紙2は所定労働時間の一部のみ休業した日がある場合のみ提出
- 別紙3は副業や複数の事業者に雇用されている場合のみ提出
別紙1の平均賃金ってどの期間の平均なのにゃ?
ちょっと詳しく説明するね!
- 平均賃金の計算期間は労災発生の直前の賃金の締め日からさかのぼって過去3ヶ月間
- 労災発生日が12月15日で締め日が末日なら直前の締め日は11月30日なので9月〜11月の3ヶ月間
別紙1で算出した平均賃金と最低保障平均賃金のうち、高い方の金額が平均賃金になります。
労働基準監督署長に提出する
労災保険給付の請求書は会社を通じて提出しても、直接提出してもどちらでも可能です。
ただし、療養保障給付請求書様式は受診した医療機関に提出します。
労働基準監督署長により調査が行われて労災認定されると給付を受けることができます。
最初に思ったよりも大変だったのにゃあ。
【休職を考えているあなたへ】傷病手当金と労災を徹底解説のまとめ
以上が傷病手当金と労災の制度とそれぞれの申請方法についてです。
最後になりましたが本記事の内容は以下の4つです。
本記事の内容
- 傷病手当金とは
- 労災とは
- 傷病手当金と労災は同時申請できる
- 傷病手当金と労災の申請方法
労災の認定が降りるのには時間がかかります。
なので労災と傷病手当金は同時に申請をするのがオススメです。
休職中の生活が不安な方はお金のプロに相談してみてもいいかもしれません。
傷病手当金について詳しく知りたい方はこちらの記事も目を通してみてください。